2011年1月22日土曜日

深刻化する米国の長期失業者問題

 2日に発表される3月の米雇用統計は新規就業者がかなり増加したことを示すと見込まれており、米政府は雇用情勢がようやく改善に向かい始めたと歓迎するだろう。しかし、その背後で静かに進行している懸念がある。それは、長期失業者の驚くべき増加である。

 6カ月以上就職先を見付けられない長期失業者が増加しているのは、今回の不況に特有の失業者が置かれた状況の変化のためだ。労働統計局(BLS)によれば、2月の長期失業者は600万人超と、昨年同月のちょうど倍に達している。失業者の40%超が長期失業者だ(就職をあきらめ労働人口から除外された人を入れれば、比率はもっと高くなる)。1981?82年の深刻なリセッション(景気後退)時でも全体の失業率に占める長期失業率の比率は26%で、現在を大きく下回っていた。

 今回長期失業者が大量発生している理由としては、労働移動が限られていることがある。これまでは、失業した場合人々は雇用が増えている地域に移動しようとしたし、移動が可能だった。

ところが、今回は住宅バブルの崩壊がリセッションの引き金となっており、労働者の移動が大幅に制限されてしまった。持ち家を売却して転居しようと思っていても、売却価格が住宅ローン残高を下回って売却損に見舞われたり、買い手が見付からなかったりするので、転居を諦めるケースが出ている。

 また、現在は共働きで生計を立てている世帯が多い。そのため、世帯主が失業しても配偶者が生活費を稼いでいる限り、その仕事を辞めてまで新しい都市に移動しようとはしない。

 さらには、昔は希望の地とみられていたカリフォルニア、ネバダ、フロリダなどの州はいずれも、住宅バブルの崩壊を受けて失業が他の地域より深刻となっている。

 もっと大きな問題は、長期失業者は技能が陳腐化し、情報化時代に適合しなくなっていることで、経済問題の後ろに社会問題が横たわっている。長期失業者は再就職が困難なだけでなく、就職しても元の収入のレベルを取り戻すことは難しい。健康問題を抱えたり、子供に十分な教育を施せなくなるため、子供が社会に出て親と同じ運命をたどることことなるという調査結果もある。

 議会は失業保険給付期間を延長し、政府は職業訓練プログラムの拡充などを図っている。しかし、失業保険の延長はやりたくない仕事を拒否する余裕を与えるだけで、実際には問題を悪化させているとみるアナリストもいる。また、最近議会を通過した雇用施策は、2カ月以上失業していた人を採用した雇用主に対する税額控除を盛り込んだが、これは、いずれ必ず増える雇用機会を先延ばしにするだけで、新規雇用を生み出すものではないとの懐疑論もある。

 政府の一部が本当にやりたいのは、インフラ整備事業を進め、交通機関やビルを建設し、長期失業状態の建設業の労働者を潤すことのようだ。だが、これは財政赤字をさらに拡大するため、選挙の年には実施できない。もし大統領が雇用を改善について語るとき顔がくもっているとしたら、この難しい問題の解決法が誰にもわからないからだ。

原文: Long-Term Unemployed Clouds the Jobs Picture

記者: Gerald F. Seib

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引用元:ロハン(新生R.O.H.A.N) 専門サイト

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